Amberで力場パラメータを作成する
概要
リガンド-タンパク質の複合体の力場パラメータ(拡張子が.prmtop
、.inpcrd
)を作成する。
環境
AmberTools19
タンパク質の準備
タンパク質についてはパラメータを作成する前にいくつか注意点がある
- 解像度は十分高いか
- 欠損残基はあるか:キャップを形成するかモデリングする必要を検討
- 欠損原子はあるか:leapで補強してくれるが、補強が原因で原子が重なってしまう可能性がある。
- 金属があるかどうか:新たに力場を準備する必要があるか検討する。
- 変異残基はあるか:leapでエラーが出る。変異残基の力場を準備する必要がある
- ジスルフィド結合はあるか:あればシステインの残基名を変更する必要がある
ヒスチジンのプロトン化:プロトン化によって残基名を変更する必要がある。何も変更をしないと、全て
HIE
になる。Amberでは
tleap
を実行する前の準備としてpdb4amber
を実行することが推奨されている。pdb4amber
を実行すると、ジスルフィド結合を自動的に考慮してくれる。
リガンドの準備
リガンド総電荷を計算する。これをlig_charge
とする。その後、以下を実行する。antechamber
でgaff
(Generate Amber Force Field)を参考にして各原子の電荷を計算し、parmchk2
でgaff
で補いきれなかったパラメータを作成する。
#!/bin/bash lig_mol2=lig.mol2 out_name=lig_out lig_charge=1 LigResName='Lig' antechamber -fi mol2 -i ${lig_mol2} -fo mol2 -o ${out_name}.mol2 -at gaff -c bcc -nc ${lig_charge} -rn {LigResName} > antechamber.log parmchk2 -i -f ${out_name}.mol2 -o ${out_name}.frcmod > parmchk2.log
複合体のパラメータ作成
以下のtest.in
を作成する。Amberで用意されている各力場パラメータと、先ほど作成したリガンドのmol2、frcmodファイルを読み込んで複合体のパラメータを作成する。
source leaprc.protein.ff14SB source leaprc.gaff loadamberparams ${out_name}.frcmod prt = loadpdb prt.pdb lig = loadmol2 lig_out.mol2 sys = combine{prt lig} charge prt charge lig saveamberparam sys sys.prmtop sys.inpcrd savepdb sys sys.pdb quit
test.in
をtleapコマンドで実行する。
$ tleap -f test.in
ジスルフィド結合を定義する
タンパク質にジスルフィド結合があれば、定義する必要がある。原子間が結合していることを示す。ここでは二つの方法を紹介する。
- pdbファイルの最後に結合情報を記す。以下のようにインデックス番号で指定する。
pdb4amber
を実行するとシステイン残基が2Å以内であればジスルフィド結合と判定され自動的にCONECT
情報が追加される。
ATOM 950 CG2 VAL A 124 28.143 10.116 17.555 1.00 22.08 C ATOM 951 OXT VAL A 124 27.661 12.956 19.992 1.00 22.31 O TER CONECT 194 642 CONECT 310 727 END
- tleapを実行時にleapファイル内で指定する。以下のように残基番号で指定する。
bond prt.32.SG prt.35.SG
金属を考慮する
- イオンとして計算する
amber内で用意されている力場を指定する。この他にもいくつか金属イオンの力場は用意されているので適当なものを選択する。
loadoff atomic_ions.lib loadamberparams frcmod.ions2341m_126_spce loadamberparams frcmod.ions1lm_126_spce
- 新しい力場を導入する
Offファイルとfrcmodファイルの二つを用意し、以下のように読み込む
loadoff test.off loadamberparams test.frcmod